カリフォルニアの庭と黒猫と里子

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社会の格差 : 優遇された白人とそうじゃない人たち

黒人差別の話がたくさん世の中に出回り、今まで気づいてなかったり無視していたりした差別や格差が前より浮き彫りになっている気がします。差別される側であっても差別する側であっても、目に見えてしまう今日この頃。自分も前より確実に意識するようになりました。今までどれだけ私は自分の無知を無視していたのでしょうか。

 

長くてうまくまとめられていませんが、アメリカに住んで20年。白人と結婚して黒人の子供の里親になり、地域で子供に係わる仕事をしている私なりに感じていることを書き留めました。

 

 

優遇された白人と結婚するということ

白人の旦那と付き合い始めた12年前。周りの私に対しての扱いが変わったことを覚えています。入りにくいなあ~って思ってたレストランなんかも旦那と一緒だと平気で入れたり、ウェイトレス・ウェイターからの扱いがずっとよくなったのをはっきりと感じました。付き合う前はアジア人が多い場所が自分の行動範囲でしたが、白人と付き合い始めて行動範囲が広がりました。

 

旦那は私の大切な人生のパートナーですし、もう12年一緒にいますし、ここまで来ると白人として彼のことを見るとかあまりないです。夫婦としての日々が日常と変化した今、自分の生活が旦那といることで変わったこともすっかり忘れていました。旦那の家族は白人の中でもブルーカラー、労働者階級の人達なのですが、それでもこの世界で最も優遇された位置にいる種類の人間なんだった、と今回のことで再確認させられました。

 

私は博士課程までこの国で勉強したし、資格もとって今までやってこれたから、ある程度の自信みたいなものはあったのです。でも実際は私がここまでやってこれたのも、安全な地域に一軒家を構えられたのも、旦那が白人でこの地域出身の人だからということが大きいことを気づかされて、恥ずかしいことですがそれに気づいてなかった自分に情けなくなった次第です。 

 

 

 仕事で感じる社会格差 

 

Covid19のロックダウン以来、クリニックに来たがらない人が増えて家に来てくれと頼まれるようになりました。今までクリニックに来ていた子供を家庭訪問で何人か診ています。患者の住んでいる家や地域を実際に見るようになり、アメリカの超格差社会をもっと身近に感じるようになりました。

 

たとえば最近湖沿いに新しい家を買った白人夫婦。子供には発達障害があるのですが、かわいい服や靴がたくさんクローゼットにしまってあり、発達をうながす良いおもちゃもたくさんあり、完全に改築された家は美しく豪華で、両親や祖父母の愛情を一心に受けて育っています。リビングとキッチンが一体になった広い一階は大きなガラス越しに湖が望め、テラスには湖を眺めながら入るプールにジャグジーがあります。とっても親切な家族ですが、一方で会話は新しく買うテスラのことだったり、ボートだったり。子供の世話はナニーに頼っている部分もあります。ハウスキーパーや、庭師以外の非白人をそのコミュニティーで見かけたことはありません。

 

その家の後に訪問するのがヒスパニック系が多い町。 

患者の家の前で車を止めるとき、私は必ず貴重品をグローブボックスに入れて鍵をかけ、外からカバンが見えないようにしています。家はフェンスで囲まれ、庭の芝は枯れています。家の中はおばあちゃんがきれいにしているので、最低限のものはそろっていますが、とても狭い。うちから20分の運転でそんな地域になります。白人はドラッグやってそうなホームレス以外、ほとんど見ない地域です。 

私にはもう一人この地域の患者がいて、その子の母親はシングルマザーで障害があるこの子を育てています。おもちゃもないし、ろくな食べ物も食べてない、いつも心配になる二人です。でもママは一生懸命で、彼女の愛は大きくて。

 

家族の愛は一緒だと感じます。

 

発達障害があるであろう赤ちゃんに、障害を乗り越えて元気に生きていってほしいと願う気持ち。可能性を最大限に広げてあげたいと思う気持ち。

金持ちであろうが貧乏であろうが、社会の高いステータスにいようがいまいが同じだと感じます。

 

そして地域も家もすんごい差なんですけど、子供たちにはなーーーんの違いもないんですよね。子供は子供。赤ちゃんや小さな子供は自分の家にいいおもちゃがあるとかないとか、自分が恵まれているか恵まれていないかなんて知らない。愛情と世話を受けていれば大丈夫だから。

 

でも大人から見るとすごい貧富の差で、そして貧富の差は肌色の差に明確に分かれている。

 

働いても疲れててもお金がはいってこない、十分なものを買ってあげられない親たちと、たくさんのものを持っている優遇されている白人たちを交互に訪ねるとやっぱり違和感を感じずにはいられなくて。

 

どちらが幸せかというとそれはまた全然別問題なんですが、ただ、子供の可能性を広げてあげるにはやはり優遇された立場にいるほうが優位なわけです。

 

偏りすぎているそのWealth、やはりおかしいよ。。と思ってしまうわけです。

 

 

里子の兄

そして貧困層の里子の家族の話です。

自分の里子が来たところです。

何世代の積み重なるトラウマ、精神疾患、ドラッグ中毒などで負のサイクルにはまった人間たち。そこから抜け出すのは容易なことではありません。

 

里子には18歳のお兄さんがいます。

里親家庭を転々として、問題を起こしながらも高校を卒業しました。彼がもらわれることはなかった。彼を養子にしてくれる家庭は現れなかった。18歳を過ぎた今彼は里親システムから放り出され、いとこのうちの転がりこんで一緒に住んでいるそうです。

そしてそのいとこや彼がみんなで一緒にテキサスに引っ越すことになったと聞き、最近彼らの家の前で撮った写真をもらいました。 

 

18歳のお兄さんは里子とこれからもコンタクトをとりたいと言っていたらしいので、電話番号をあげました。そして、「里子はあなたのことをよく話しますよ。電話してくれたらつなげるからいつでもしてくださ」、とテキストを送りました。里子はお兄さんと話したくて一生懸命留守電にメッセージをのこしました。

「電話していいかわからなかったけど話したかったから電話したよ。会いたいよ。」と。 

頑張ってメッセージを残す我が子の言葉と姿にせつなくなりました。 

 

お兄さんから返信はありませんでした。

 

里子にはこれまた別の家庭に養子にもらわれた他のお兄さんがいるのですが、そのお兄さんの養母は彼らと引き続きコンタクトをとっており、うちの里子が安定している良いおうちにもらわれたということをこの18才のお兄さんに伝えたと言っていました。

 

里子が”安定したよいおうち”にもらわれたと知って、それを邪魔したくないという思いなのか。

それとも黒人じゃない家庭にもらわれたことに怒りを感じたり、黒人じゃない私たちとはつながりを持ちたくないのか。それとも一緒にたいして住んだこともなかった弟に対してそれほど思い入れはないのか。。彼の気持ちはわかりません。

 

送られてきた写真は、いとこ家族とお兄さんがみんなで並んで家の前で撮っているものでした。

見るからに貧しい家。

 

お兄さんの笑顔は私の里子と目元のやさしい感じが特に似ています。

でも里親のところにいた時より、やせほそっていて、顔色が悪いのが心配です。ドラッグをやっているのじゃないかと思ってしまいます。

 

彼に連絡先を教えたことに不安がないわけではありません。彼は確実にたくさんのトラウマを抱えて生きている人間だから。

ここから這い上がってほしいし、里子と健全な関係を気づいてほしいとも思う。でもそれが社会的にできにくい構造になっている。

彼のことを思うと心苦しいし心配だし、これから里子とどう関わっていくのかも正直心配です。私たちは優遇された場所にいるから。お兄さんは里親システムのなかで、孤独を感じながら育ってきた。親に傷つけられ一生信頼することができる大人に出会った確率は、養子にならなかったことを考えると非常に低い。その場所から、たった18歳の黒人の男の子に這い上がって仕事見つけてしっかりと働けっていっても非常に難しいはず。心苦しいです。

 

 

今色々な議論がされています。

 

このままではいけないと思っている人もたくさんいれば、関係ないと思っている人たちもたくさんいる。分断をひどくする方向に走っている人もいれば、歴史をしっかり勉強して勝者にとっての歴史ではない、偏らない理解をしようとしている人たちもたくさんいます。

 

誰が個人的に悪いとかいうわけじゃないし、私が生きている場所を後ろめたく思うことも間違っているような気がするのですが、私たちは自分のいるところを再確認しなくてはいけない。優遇されている立場の人間は意識を変えないといけない。程度は違うけどやっぱり優遇されていない立場の人間を応援していかないといけないと思うのです。

 

格差の大きい社会でいろいろなサイドを見てかかわりを持つというのは疲れるものだと思います。私はこの1ー2ヶ月ぐったりと疲れました。

 

自分にとって楽な場所から出たくなくなるのは当然なことだと思います。その方が楽ですもん。

 

しかし私は里親になるという選択をしちゃったことで、私の小さな世界から出ていかなくてはいけないと感じています。この生き方を選んだ以上、格差を無視してこれ以上生きちゃいけない。

 

黒人差別について、いろいろな人の感想などを読み、黒人が犯罪を犯すからしょうがないとかの意見もたくさんみました。この二人の意見を聞くと少し見方が変わるのではないかと思います。違う立場の人の声を聞くことは必要です。

 

https://www.youtube.com/watch?v=v4amCfVbA_c

https://www.youtube.com/watch?v=llci8MVh8J4

 

時間も翻訳の才能もないので日本語に訳せてませんが、しかも字幕をどうやってつけるのかとか知らにゃいので。。。英語がわかる方はぜひ見てほしいビデオです。

 

私は二個目のキンバリーさんの、「We don't own anything!!」と叫ぶ姿が印象に残っています。

 

お時間があったらぜひ。

 

そしてこの本はなぜ、白人と差別に対して語り合うのが難しいかを理解するのに役に立ちました。ほんっとーに白人と人種差別について語り合うのは難しいです。何回か試みたけど一瞬で会話が終わります。笑

白人にはぜひ読んでいただきたい本ですが有色人種にも、ああそんなわけなのねえ。と理解が深まるかもしれません。でも、もういいようちらはそんなの知っとるわ!と言いたくなる部分もあり。。。でも読んでよかったと思います。旦那とのすれ違いもなんとなく理解できた気がします。それに自分も日本ではマジョリティですから自分の意識も少し変わったように思います。

 

私個人の体験と感じていることをつらつらと書いてしまいましたが長々と読んでいただいた方、ありがとうございます。

 

不安定な世の中、思うように行き来できない世の中ではありますが、皆様の体と心の健康が守られますように。